C型肝炎について

C型肝炎について(一般的なQ&A)
の改訂にあたって

本Q&Aは平成13年の初版以来、C型肝炎の診断、予防、治療に関する研究の進歩、対策の進展に合わせて改訂を重ね今日に至ったものです。

このたびは、体裁を改め、C型肝炎ウイルスとC型肝炎の病態、および予防の解説を中心にできるだけわかりやすく書き改めました。

なお、治療については、抗ウイルス薬の開発が相次ぎ、C型肝炎のほとんどは治癒可能な疾病となりつつありますが、治療法はまだ進化の途上にあることから本Q&Aでは、その概要を記述するに止めました。

最新の情報については、治療研究の成果をもとに1年ごとに改訂、公表される厚生労働省の研究班(熊田班)による「C型慢性肝炎治療のガイドライン」(当財団のHP「肝炎研究支援」に掲載)をご利用いただくことにいたしました。本Q&Aと併せてご活用いただければ幸いです。

平成26年7月1日
公益財団法人ウイルス肝炎研究財団

<概要版>

肝臓の働きには、
  • 栄養分(糖質、たん白質、脂肪、ビタミン)の生成、貯蔵、代謝
  • 血液中のホルモン、薬物、毒物などの代謝、解毒
  • 出血を止めるための蛋白の合成
  • 胆汁の産生と胆汁酸の合成
  • 身体の中に侵入したウイルスや細菌の感染の防御
などがあり、我々が生きていくためには健康な肝臓であることがとても大切です。

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって起こる肝臓の病気です。肝臓は予備能力が高く、慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。このことを正しく認識し、HCVに感染していることがわかったら、症状がなくても医療機関を受診して、肝臓の状態を評価してもらうことが大切です。
成人がHCVに初めて感染すると、約70%の人がC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)となり、放置すると本人が気づかないうちに、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進展する場合があるので、注意が必要です。

C型肝炎ウイルス(HCV)は、主としてHCVに感染している人の血液を介して感染します。具体的には、以下のような場合に感染が起こる可能性があります。

  • HCVに感染している人が使用した器具を、適切な消毒などを行わずにそのまま用いて、 入れ墨やピアスの穴あけなどをした場合
  • HCV陽性の血液を傷のある手で触ったり、針刺し事故を起こしたりした場合(特に保健医療従事者は注意が必要です。)
  • 注射針・注射器をHCVに感染している人と共用した場合
  • HCVに感染している人と性交渉をもった場合(ただし、まれ)
  • HCVに感染している母親から生まれた子供(ただし、少ない)

HCVに感染している人の血液や体液が体内に入らなければ、HCVに感染することはありません。
従って、以下のような場合にはHCVは感染しません。

  • HCVに感染している人と握手した場合
  • HCVに感染している人と軽くキスした場合
  • HCVに感染している人と食器を共用した場合
  • HCVに感染している人と一緒に入浴した場合等

現在の我が国では、感染はほとんどみられなくなっています。
我が国では、平成元年(1989年)12月に全国の日赤血液センターにおいて、C型肝炎ウイルス(HCV)感染予防のための検査(HCV C100-3抗体検査)が世界に先がけて導入されました。 平成4年(1992年)2月からはより精度の高い検査(HCV抗体検査)に切り替えられたことから、輸血によるHCVの感染はほとんどみられなくなりました。さらに、平成11年(1999年)10月からは核酸増幅検査(NAT)によるHCV-RNAの検出が全面的に導入され、血液の安全性は一段と向上しています。
但し、平成4年(1992年)以前に輸血(や臓器移植手術)を受けたことがある方については、 当時はHCVに汚染された血液か否かを高感度で検査する方法がなかったことから、C型肝炎に感染している可能性が一般の方より高いと考えられます。また、平成6年(1994年)以前にフィブリノゲン製剤の投与を受けた方(フィブリン糊としての使用を含む。)、又は 昭和63年(1988年)以前に血液凝固第VIII、第IX因子製剤の投与を受けた方は、これらの製剤の原料(血液)のウイルス検査、HCVの除去、不活化が十分になされていないものもありましたので、HCVに感染している可能性が一般の方より高いと考えられます。上記に該当する方は、一度HCVの検査を受けておかれることをお勧めします。

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、全身倦怠(けんたい)感に引き続き食欲不振、悪心 (おしん)・嘔吐(おうと)などの症状が出現することがあります。これらに引き続いて黄疸(おうだん)が出現することもあります。他覚症状として、肝臓の腫大が見られることがあります。これが急性肝炎の症状ですが、一般に、C型急性肝炎では、症状が軽いため、ほとんどの人では自覚症状がないと言われています。
HCVに持続感染している人(HCVキャリア)では、自覚症状がなくても慢性肝炎が潜んでいて治療が必要な場合がありますので、専門医による精密検査と、その後の定期検査を受け、必要に応じて適切な治療を受けるなど健康管理を行うことが大切です。

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかは、血液を検査して調べます。血液検査では、まずHCV抗体の有無を検査します。HCV抗体陽性の人の中には、「現在ウイルスに感染している人」(C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア))と「過去にHCVに感染したが治った人」(感染既往者)とがいます。
このため、HCVキャリアと感染既往者とを区別するために、血液中のHCV抗体の量(HCV抗体価)を測定することと、核酸増幅検査(NAT)によりHCVの遺伝子(HCV-RNA)を検出することの2つの検査法を組み合わせて判断する方法が一般的に採用されています。
なお、HCVに感染した直後では、身体の中にウイルスが存在しても、まだHCV抗体が作られていないことがありますが(HCV抗体のウィンドウ期)、これは新規のHCV感染の発生が少ない我が国ではごくまれなこととされています。

C型慢性肝炎の治療法には、大きく分けて、抗ウイルス療法(インターフェロン単独療法、 インターフェロンとリバビリンの併用療法、インターフェロン、リバビリンに加えてプロテアーゼ阻害薬を併用する治療法)と肝庇護療法の2つの方法があります。
インターフェロン治療の適否は、全身状態、C型肝炎の病期、活動度の他に、血液中のC型肝炎ウイルスの量や遺伝子型(ジェノタイプ)C型肝炎ウイルスの作るアミノ酸の配列、我々自身の遺伝子配列などによって左右されます。
肝庇護療法には、ウルソデオキシコール酸の内服、グリチルリチン製剤の静注があります。瀉血療法が行われることもあります。
治療法を選択するにあたっては、肝臓専門医とよく相談することが大切です。

他人の血液に触れないことが大切です。 具体的には、以下のようなことに気をつけてください。
  • 歯ブラシ、カミソリなど血液が付いている可能性のあるものを共用しない。
  • 他の人の血液に触るときは、ゴム手袋を着ける。
  • 注射器や注射針を共用して、非合法の薬物(覚せい剤、麻薬等)の注射をしない。
  • 入れ墨やピアスをするときは、適切に消毒された器具であることを必ず確かめる。
  • よく知らない相手との性交渉には他の性感染症の予防と同様にコンドームを使用する。
以上の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性が極めて高いことは言うまでもありませんが、違法行為は行わないことが基本です。

40歳以上のC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)を100人選び出すと、そのうち65~70人が慢性肝炎と診断されます。
また、HCVキャリア100人が適切な治療を受けずに70歳まで過ごした場合、10~16人が肝硬変に、20~25人が肝がんに進行すると予測されています。
しかし、適切な治療を行うことで病気の進展を止めたり、遅くしたりすることができますので、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染していることが分かった人は、必ず定期的に医療機関を受診して、ご自身の肝臓の状態(肝炎の活動度、病期)を正しく知り、適切に対処するための診察を受けられることをお勧めします。

<詳細版>

総論

C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって起こる肝臓の病気がC型肝炎です。

肝臓は、予備能力が高く、日常では全体の20%程度しか使われていないため、慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。
このことを正しく認識し、HCVに感染していることがわかったら、症状がなくても医療機関を受診して肝臓の状態を評価してもらうことが大切です。

HCV感染とC型肝炎の特徴を簡単にまとめると、以下のようになります(HCVとC型肝炎の知識(財)ウイルス肝炎研究財団編)。

  • HCVは、感染している人の血液を介して感染する。
  • 急性期では、症状が軽いことから、気づかない場合が多い。
  • HCVに感染すると、一過性で治る人もいるが、70%前後の人はC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)となる。
  • 40歳以上のHCVキャリアを100人選び出すと、そのうち65~70人が慢性肝炎と診断される。
  • 40歳のC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)100人が適切な治療を受けずに70歳まで放置された場合、10~16人が肝硬変に、20~25人が肝がんに進展すると予測されている。
  • 抗ウイルス療法によりHCVの駆除に成功すると、C型慢性肝炎(線維化の程度の軽い慢性肝炎)は完全に治癒する。
  • 抗ウイルス療法の適応がなかったり、抗ウイルス療法が無効な場合でも、肝庇護療法により肝炎を沈静化させることにより、肝の線維化の進展を抑止することができる。
  • C型慢性肝炎の治癒、肝の線維化進展の抑止は、肝発がんを予防する効果がある。
  • 肝がんは、慢性の炎症が持続したことにより線維化が進展した(前硬変または肝硬変の) 肝を発生母地として、50歳代終わりから60歳代はじめの年齢層に好発する。
  • 近年は、肝発がん好発年齢の高齢化(60歳代終わりから70歳代)がすすんでいる。

C型肝炎ウイルス(HCV)の感染による肝炎がC型肝炎です。献血時や健診などの機会にHCVキャリアであることがわかった人の65~70%は、初診時の検査で慢性肝炎と診断されますが、ほとんどの人では自覚症状はありません。慢性肝炎から、肝の線維化が進んだ状態が肝硬変で、慢性肝炎や肝硬変の人の肝臓には肝がんが発生することがあるため、注意が必要です。
慢性C型肝炎、肝硬変、肝がんは、HCVの持続感染に起因する一連の疾患であるといえます。

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、全身倦怠感に引き続き食欲不振、悪心・嘔吐などの症状が出現することがあります。これらに引き続いて黄疸が出現することもあります。 黄疸以外の他覚症状として、肝臓の腫大が見られることがあります。しかしほとんどの場合、自覚症状がないままで経過しますので、本人が気づかないうちに慢性肝炎、肝硬変となっていることがあります。
HCVに感染していることがわかったら、自覚症状がない場合でも定期的に肝臓の検査を受け、肝臓専門医(あるいはかかりつけ医)の指導の下に健康管理を行い、必要に応じて治療を受けることが大切です。
詳しくは、肝臓専門医(あるいはかかりつけ医)にお尋ね下さい。

診断と検査

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかは血液を検査して調べます。検査としては、以下のようなものが用いられています。

1.HCV抗体検査:HCVに感染した生体が作る抗体を検査する方法
2.HCVコア抗原検査:HCV粒子を構成するコア粒子のタンパクを直接検査する方法で、検体(血清)の中のHCVの存在、量を知るために用いられる。
3.核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test: NAT):HCVの遺伝子(RNA)の一部を試験管内で、約1億倍に増やして検出する検査法で、検体(血清)中のごく微量のHCVを感度よく検出する。

日常検査では、まずHCV抗体を検査します。「HCV抗体陽性」と判定された人の中には、「現在HCVに感染している人(C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア))」と「過去に HCVに感染し、治癒した人(感染既往者)」とが混在しています。このため、HCVキャリアと感染既往者とを適切に区別するためにHCV抗体検査とHCVコア抗原検査、またはNATを組み合わせて判断する方法が一般に採用されています。なお、HCVに感染した直後には、HCVが存在しても、HCV抗体が陰性の時期があります(HCV抗体のウィンドウ期)が、これは 新規のHCV感染の発生が少ない我が国ではごくまれなこととされています。

C型肝炎ウイルス(HCV)は、直径55~57nmの球形をしたRNA型のウイルスです。ウイルス粒子は二重構造をしており、ウイルスの遺伝子(HCV RNA)とこれを包んでいるヌクレオカプシドから成る粒子(コア粒子)、そして、これを被う外殻(エンベロープ)から成り立っています。HCV抗体とは、HCVのコア粒子に対する抗体(HCVコア抗体)、エンベロープに対する抗体(E2/NS-1抗体)、HCVが細胞の中で増殖する過程で必要とされるタンパク(非構造タンパク Non. Structural:NSタンパク )に対する抗体(C100-3抗体、C-33c抗体、NS5抗体など)のすべてを含む総称です。「HCV抗体陽性」と判定された人は、「現在HCVに感染している人と「過去にHCVに感染し、治癒した人(感染既往者)」とに大別されます。一般に、HCVキャリアでは、血液中に放出され続けるHCVの免疫刺激に身体がさらされていることからHCV抗体がたくさん作られています(HCV抗体「高力価」陽性)。
しかし、抗体を作る能力には個人差があることから、ごくまれに、HCVキャリアでも抗体があまりたくさんは作られていない人(HCV抗体「中力価」陽性)や、少ししか作られていない人(HCV抗体「低力価」陽性)も存在します。
一方、HCVに急性感染した後に自然に治癒した人や、HCVキャリアであった人がインターフェロン治療などにより、HCVが体内から完全に排除されて治癒した場合(感染既往者)では、年単位の時間をかけて、血液中のHCV抗体は低下していきます。
なお、HCVが体内から排除されて間もない人(インターフェロン治療直後など)では、まだ HCV抗体が「高力価」陽性の場合があります。また、逆に、HCVに感染した直後では、身体の中にHCVが存在しても、まだHCV抗体が陰性の場合があります(HCV抗体のウィンドウ期)。しかし、これは新規のHCV感染の発生が少ない我が国ではごくまれなこととされています。

C型肝炎ウイルス(HCV)のコア粒子の表面を構成するタンパクがHCVコア抗原です。HCVコア抗原は、外殻(エンベロープ)に被われてHCV粒子の内部に存在することから、そのままでは検出されません。HCVに感染している人の血中には、HCV粒子とともにHCVのコアに対する抗体も共存することから、単純にウイルスの外殻(エンベロープ)を壊してもすぐに HCVコア抗原と抗体の反応が起きてしまい、検出することができなくなってしまいます。 このため、HCVコア抗原を検出するためには、検査に先立って、HCV粒子とともに、ウイルスに対する抗体をタンパクの最小単位(ペプチド)にまで分解する処理をします(前処理)。この前処理により、HCVのコアペプチドの抗原活性は残りますが、ウイルスに対する抗体は活性を失います。
この性質を利用して、前処理した後に酵素抗体法(EIA法)、免疫化学発光法などの手法を用いてコア抗原を検出する検査法です。
HCVコア抗原を検査する意義としては、下記が挙げられます。

  • 検体(血清)中のHCVの存在の有無を直接的に知ることができる。
  • 検体(血清)中のHCVの量を知ることができる。
  • 核酸増幅検査(NAT)と比べ、検体(血清)の扱い、保存が簡便である。
  • 核酸増幅検査(NAT)に比べ、検査の操作が簡便であり、特別な訓練や施設を必要としない。
  • 検査費用が安価である。

HCVコア抗原検査は、その感度、特異度が向上したことから、C型肝炎の経過観察や治療効果のモニタリングなどに広く利用されています。

核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test:NAT)とは、標的とする遺伝子の一部を試験管内で約1億倍に増やして検出する方法です。
この方法を応用すると、検体(血清)の中に存在するごく微量のHCVを感度よく検出できることから、HCV抗体が「中力価」~「低力価」陽性を示す人を、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)と感染既往者とに分けることができるようになりました。また、HCVに感染した直後で、抗体が作られる以前の時期(HCV抗体のウィンドウ期)の人についても的確に診断ができるようになり、輸血用の血液の安全性の向上に役立てられています。
さらに、血液中のHCV-RNAを定量することができるようになったことからHCV感染の経過を適切に把握して、健康管理に役立てたり、抗ウイルス療法を行った際の経過観察や治療効果の判定にも役立てることができるようになりました。

現在認可を受けて市販されている各種のHCV検査試薬を用いた場合、「正しい意味での偽陽性反応」はほとんどないと言ってよいでしょう。
しかし、HCV抗体陽性者の中には、「現在C型肝炎ウイルス(HCV)に感染している人」と、 「過去にHCVに感染し、治癒した後の人(感染既往者)」とがいることから、HCV抗体検査だけでは、現在HCVに感染しているかどうかの正しい診断はできないことがわかっています。特に、HCV抗体が陽性であっても、HCV抗体「低力価」と判定される人では、そのほとんどでHCV-RNAは検出されない(HCVの感染既往者と判定してよい)ことから、必要以上にHCV抗体の検出感度が高い試薬を用いることは意味がないばかりか、かえって診断する上で混乱を招く場合があると言えます。
現在では、HCVキャリアと感染既往者とを適切に区別するために、血清中のHCV抗体の量(HCV抗体価)を測定することと、HCVコア抗原検査または核酸増幅検査(NAT)を組み合わせて検査する方法が一般に採用されています。

現在認可を受けて市販されている各種の検査試薬を用いた場合、「正しい意味での偽陰性反応」はほとんどないといってよいでしょう。ただし、HCVに感染した直後では、身体の中にHCVが存在しても、まだ抗体が作られていない時期(HCV抗体のウィンドウ期)のことがありますので注意が必要です。しかし、新規のHCV感染の発生がきわめて少ない我が国では、一般にHCV抗体のウィンドウ期に検査を受けることは、ごくまれなこととされています。

ウイルスの遺伝子型とは、ウイルスの遺伝子を構成する塩基配列の違いをもとに、いくつかの型に分類したもののことです。C型肝炎ウイルス(HCV)は、大きく分けて6つの遺伝子型(ジェノタイプ)に分類されていますが、このうち、日本では1bが全体の約70%を占め、次いで2aが約20%、2bが約10%となっており、これ以外の型はごく少数に見られるに過ぎないことが明らかにされています。

感染したC型肝炎ウイルス(HCV)の量によって多少の差はありますが、一般に感染後3ヵ月くらいでHCV抗体は検出されるようになるとされています。ごく微量のHCV(感染成立に必要な最小HCV量)を実験的に感染させたチンパンジーでは接種後3.3ヵ月でHCV抗体が検出できるようになることがわかっています(吉澤、他:2004)。

感染成立直後のC型肝炎ウイルス(HCV)は、きわめて早いスピードで増殖することがわかっています。例えば、実験的にHCVを感染させたチンパンジーでは、感染成立直後に血液中のウイルス量が2倍に増えるために要する時間(ダブリングタイム)は10時間弱、10倍に増えるために要する時間はおよそ1.5日であることがわかりました。実験的には、ごく微量のHCV(感染成立に必要な最少ウイルス量)を感染させた場合、6~9日で血中のHCV RNA が検出できるようになることがわかっています(Tanaka J. et al:2005)。

以下のような方々は、C型肝炎ウイルス(HCV)の検査を受けておくことをお勧めします。
a. 平成4年(1992年)以前に

  • 輸血を受けたことがある方
  • 大きな手術を受けたことがある方
  • フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む)を投与されたことがある方
  • 血液凝固因子製剤を投与されたことがある方
  • 臓器移植を受けたことがある方

b. 長期に血液透析を受けている方
c. 薬物濫用者、入れ墨(タトゥー)をしている方
d. ボディピアスを施している方
e. その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにもかかわらず、その後、肝炎の検査を受けていない方等)

核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification test:NAT)によるHCV-RNA検査を受け、「現在ウイルスに感染している状態」なのか、「過去にウイルスに感染し、治癒した状態(感染既往者)」なのかを判別します。「現在ウイルスに感染している」ことがわかった場合には、血液中のウイルス量、肝臓の状態(肝炎の活動度、病期)を調べ、直ちに治療を始める必要があるか、当面は経過を観察するだけでよいかを決定します。このためには、C型肝炎に詳しい医師による精密検査が必要です。

医療機関では以下の検査が行われます。

<血液検査>
1. 肝炎ウイルスの検査
C型肝炎ウイルス持続感染(HCVキャリア)であることの確認、および、HCVの量、HCVの遺伝子型(ジェノタイプ)などについても調べます。

2. 血液生化学検査
AST(GOT)、ALT(GPT)値の測定により、肝細胞破壊の程度(活動度)を調べます。 この他、肝臓の機能(タンパク質合成の能力、解毒の能力などが保たれているか)、血小板数なども調べます。

<超音波(エコー)検査>
肝臓の病期の進展度(ごく初期の慢性肝炎か、肝硬変に近い慢性肝炎かなど:線維化の程度)、肝臓内部の異常(がんなど)の有無を調べます。

これらの検査の結果により、必要に応じて次の段階の検査(CT、MRI、血管造影など)が行われることもあります。

感染と予防

C型肝炎ウイルス(HCV)は主に感染している人の血液を介して感染します。例えば、以下のような場合には感染する危険性があります。

  • 適切な消毒をしていない器具を使って、ピアスの穴あけ、入れ墨、出血を伴う民間療法などを受けた場合
  • HCV感染者が使った注射器・注射針を、適切な消毒などをしないで繰り返し使用した場合
  • 他人と注射器を共用して覚せい剤、麻薬等を注射した場合

上記の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性が極めて高いことは言うまでもありませんが、違法な行為は行わないことが基本です。また、以下の場合にも感染する可能性があります。

また、以下の場合にも感染する可能性があります。

  • HBV感染者と性交渉をもった場合
  • HBV感染者の血液が付着した針を誤って刺した場合
  • HBV感染者の血液が付着したカミソリや歯ブラシを使用した場合
  • HBVに感染している母親から生まれた子に対して、適切な母子感染防止策を講じなかった場合

1990年代以降の我が国では、日常生活の場で、HBVに感染することはほとんどなくなっていると考えられています。

  • 頻繁に不特定の他人の血液に触れる職業に従事している場合
  • HCV感染者の血液が付着したカミソリや歯ブラシを共用した場合
  • 長期間にわたって血液透析を受けている場合

なお、今日の我が国では日常生活の場で、HCVに感染することはほとんどないと考えられています。

C型肝炎ウイルス(HCV)は性行為で感染することはまれとされています。しかし、感染しないと断定できるものではなく、他の性行為感染症の予防という観点からも、よく知らない人との性交渉を持つ場合には、コンドームの使用をお勧めします。

感染することはほとんどないと考えてよいでしょう。
病院に通っているC型慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者さん150人の配偶者を調べたところ、このうちの21人(14%)がC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることがわかりました。また、献血時の検査で見つかった自覚症状のないHCVキャリア50人の配偶者を調べたところ約12%が夫婦ともHCVキャリアであったという結果も得られています。しかし、夫婦に感染しているHCVの遺伝子の配列を相互に比較してみると、ほとんどの場合一致しないことがわかりました。この結果は夫婦間での感染ではなく夫婦それぞれが別々の感染源からHCVに感染したことを示しているといえます。

以下のようなことに注意していれば、家庭内や日常生活の場で感染することはほとんどないといえます。

  • 血液や分泌物の付着したものは、むき出しにならないようにしっかり包んで捨てるか、流水でよく洗い流す。
  • 外傷、皮膚炎、鼻血、月経血などはできるだけ自分で手当てする。
  • 歯ブラシやカミソリ、タオルなどの日用品は専用にし、他人と共用しない。
  • 乳幼児に口うつしで食物を与えない。
  • トイレを使用した後は流水で手を洗う。
  • 女性のHCVキャリアは、月経中は浴槽に入ることを避ける。

一般に、集団生活の場でC型肝炎ウイルス(HCV)の感染が起こることはほとんどないとされています。
実際、ある会社において肝炎ウイルス検査を受診した者3,079人を3年間にわたって調べた成績から、新たにHCVに感染した人はいなかったことが明らかにされています。
また、ある介護、福祉施設の入所者703人を4年間にわたって調べた成績から、新たにHCV に感染した人はいなかったことも明らかにされています。
なお、この703人の中には、25人のHCV感染者が特定されないまま入所していたことがわかっています(吉澤、他:1996)。
これらの結果は、ごく常識的な日常生活の習慣を守っているかぎり、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であっても集団生活の場で他人にHCVを感染させることはないことを示していると言えます。
C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることを理由に、保育所、学校、介護施設などで区別をしたり、入所を断ったりする必然性はありませんし、また、そのようなことは許されることではありません。

現在、日本で行われている医療行為(歯科医療を含む)でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染することはほとんどないと考えられています。しかし、まれに医療機関内での感染例や長期間にわたって血液透析を受けている方での感染事例が報告されており、今後も医療機関における感染予防の徹底を図ることが求められています。

C型肝炎ウイルス(HCV)のスクリーニング検査については、1989年12月から世界に先がけてc100-3法によるHCV抗体検査が導入され、輸血後C型肝炎の発生率はそれまでの8.7%から2.1%にまで減少しました。
また、1992年2月からは、より精度の高いHCV抗体検査に切り替えられたことから輸血後C型肝炎はほとんどみられなくなりました。さらに1999年10月からは、核酸増幅検査(NAT)によるスクリーニングが全面的に導入されたことから血液の安全性は一段と向上し、2008年から2013年までの6年間では2010年と2013年に各1例、計2例の確診例がみられるにすぎなくなっています(日本赤十字社2014年)。
しかし、100%予防することは不可能で、感染後ごく早期に献血された血液は、NATによってもウイルスが検出できずに感染源となってしまうことがあることから、検査目的での献血は絶対にしないことが大切です。感染の不安のある方は、まず保健所等で検査を受けることが、血液製剤の安全性を確保するためにも、また、ご自身の病気のその後の治療をきちんと行うためにも重要です。

C型肝炎ウイルス(HCV)感染予防のためのワクチンや免疫グロブリンは、現在のところ開発されていません。
これは、HCV粒子の外殻(エンベロープ)タンパクを作る遺伝子(E2/NS-1領域)が変異を起こし易いため、HCVに感染した個体がエンベロープに対する抗体(E2/NS-1抗体)を作った時には、既にその構造が変わってしまっていることから、一般的な意味での感染防御抗体としての働きを期待することができないということによります。このため、HCVのワクチンを開発することも難しいとされています。一方、HCVエンベロープタンパクに対する抗体陽性の大人数の血漿を集めて、ガンマグロブリンを作れば、感染予防に役立つ免疫グロブリンを作ることができるのではないかとの考え方も成り立たないわけではありません。現在も、様々な観点から研究が進められています。

感染することがあります。
C型肝炎ウイルス(HCV)には、感染防御や排除に関係するウイルス粒子の外殻(エンベロープ)を構成するタンパクを変異させることによって、生体からの排除をまぬがれて感染を持続するという性質があります。従って違う遺伝子型(ジェノタイプ)のHCVはもとより同じジェノタイプのHCVにも再感染します。
実際、HCV感染のハイリスク群に属する静脈注射乱用者の集団を対象として調査したところ、複数の異なるジェノタイプのHCVに同時に感染している例が既に見出されています。また、HCVの感染既往者(HCV抗体陽性、HCV-RNA陰性の人)に新たにHCVの再感染が起こった例も見出されています(広島透析患者肝炎Study group 2003)。

母子感染

妊娠しているからといって、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染するリスクが増えているわけではありません。もし妊婦でHCV感染の危険因子(Q13参照)を持っているようであれば、 一般の方と同様にHCV抗体検査だけではなく、現在HCVに感染しているかどうかの検査を受けておくことをお勧めします。

授乳でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとの報告はありません。ただし、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の母親で、乳首に傷があったり、出血したりしている場合は、児に感染させる可能性があるので、傷などが治るまでの間は授乳を控えることが必要です。

C型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)

C型肝炎ウイルス(HCV)は感染防御に関係する外殻(エンベロープ)の一部が次々と変異することから、ウイルスを排除する機構が十分に機能しないと考えられています。実際、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の血液を調べてみると、ほとんど例外なくHCVのエンベロープに対する抗体が検出されることがわかっています。また、年余の長期間にわたってHCVに感染しているチンパンジーの保存血清を調べたところ、HCVのエンベロープタンパクが次々と変異しており、これを追いかけるように、変異する前のエンベロープタンパクに対する抗体が次々と作られていることが明らかにされています。HCV感染にはこのような性質があることから、感染を予防するために有効な免疫グロブリンやワクチンは、現在のところ、まだできていません。

C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることがわかったら、まず、C型肝炎に詳しい医師による精密検査を受けることから始めてください。そして、ご自身の健康を守るために、以下の事項を守って下さい。

1.定期的に(少なくとも初めの1年間は2~3か月に1回程度)医療機関を受診し、自分の肝臓の状態を正しく知る。
2.かかりつけ医とよく相談して健康管理を行い、必要に応じて治療を開始する。
3.かかりつけ医が処方した薬を勝手に止めたり、かかりつけ医に無断で薬(薬局などでご自身が入手した薬や、民間療法の薬を含む)を服用したりしない。
4.過労を避け、規則正しい生活を心がける。
5.飲酒を控える。
6.標準体重の維持に努める。

なお、C型肝炎ウイルス(HCV)は、くしゃみ、せき、抱擁、食べ物、飲み物、食器やコップの共用、日常の接触では感染しません。

C型肝炎ウイルス(HCV)に初めて感染した場合、その70%前後の人が持続感染状態に陥り (キャリア化)、その後慢性肝炎となる人も多く、さらに一部の人では肝硬変、肝がんへと進行することがわかっています。
40歳以上のC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)100人のうち65~70人は慢性肝炎と診断されます。
また、献血を契機に見出された自覚症状のないHCVキャリアと、抗ウイルス療法などの積極的治療を受けていなかった通院中のC型慢性肝疾患患者計1,428人の経過観察結果をもとに、数理モデル(マルコフの過程モデル)を用いて、HCVキャリアの自然史を解析した成績をみるとHCVキャリア100人が適切な治療を受けずに70歳まで過ごした場合、10~16 人が肝硬変に、20~25人が肝がんに進行すると予測されています(Tanaka J. et al, 2003)。 しかし、適切な治療を行うことで病気の進展をとめたり、遅くしたりすることができますので、HCVに感染していることが分かった人は、必ず医療機関を定期的に受診して、ご自分の肝臓の状態(肝炎の活動度、病期)を正しく知り、適切に対処するための診断、治療を受けることが大切であるといえます。

あります。
但し、C型肝炎患者の肝酵素(ALT(GPT)、AST(GOT))の値は変動しますから、ある時は正常値、別のある時は異常高値という場合があります。広島県赤十字血液センターで献血をした際に発見された1,020人のC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)(平均年齢43.5歳)の病院初診時の臨床診断結果をみると、慢性肝炎530人(52.0%)、肝硬変5人 (0.5%)、肝がん1人(0.2%)で、初診の段階では「異常が認められなかった人」、つまり、 AST、ALT値が正常値を示し、かつ画像診断上も異常を認めなかった人が483(47.4%)となっています。なお、初診の段階でALT値の異常を認めなかったHCVキャリアの集団を2か月に1回の頻度で2年間にわたって追跡したところ、男性では40%、また女性ではその20%にいずれかの検査の時点でALT値の異常が捉えられています(Mizui M, et al:2007)。
肝酵素(ALT、AST)は、肝細胞が壊れた際に血液中に放出され、その値が上昇するもの(逸脱酵素)ですから、検査をした時点でこの数値が正常であっても、肝臓の病期が進んだ状態(肝の線維化が進んだ状態)にある場合もありますので、一度は専門医で精密検査を受けることをお勧めします。
また、精密検査により異常が認められなかった場合でも、定期的に検査を受け、健康管理に努めることが必要です。

初診時の検査で、直ちに本格的な治療を始める必要はないごく軽い慢性肝炎と診断された場合や、特に異常は認められないとされた場合でも、定期的(2~3か月ごと)に検査を受け、新たに肝臓に「異常」が起こっていないかどうかをその都度確認しながら生活することが大切です。定期的に受診して、直ちに治療を始める必要がある程度の「異常」がないことを確かめながら生活することと、他人への感染予防を心がける限り、日常の生活習慣の変更や日常活動の制限などをする必要は全くありません。
肝臓の病態を正しく把握するために、最低限、一度は肝臓専門医による精密検査を受けることが大切です。

必要です。
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染している人の治療は、C型肝炎の診断、治療に関する最新の知識、経験によることが望ましいからです。
初診時に、肝臓に「異常」がみつからなかったり、ごく軽い慢性肝炎で直ちに本格的な治療を始める必要はないとされた場合でも、定期的に(2~3か月ごと)に専門医を受診して検査を受け、肝臓に「異常」が起こっていないかどうかを、その都度確認しながら生活し、必要に応じて適切な治療を受けることが大切です。

肝臓を保護するために飲酒は可能な限り避けることが望ましいといえます。
C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の人を、飲酒の習慣がある人とない人に分けて比較してみると、飲酒の習慣がある人の方が肝炎の病期はより速く進展することがわかっています。また、かつて「アルコール性肝障害」と診断されていた人たちの多くは、HCVキャリアまたはC型慢性肝炎の人たちが飲酒していたにすぎないこともわかっています。

C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の方は、次のようなことに注意すれば、他人に感染させることはありません。

  • 歯ブラシ、カミソリなど血液が付着するものを他人と共用しない。
  • 皮膚の傷や湿疹などは覆っておく。
  • 月経血、鼻血などは自分で始末する。

1995年~2000年の6年間に、全国の日赤血液センターにおいて初めて献血した348.6万人について、2000年時点における年齢に換算して集計した年齢別のC型肝炎ウイルス(HCV) 抗体陽性率をみると、16~19歳で0.1%、20~29歳で0.2%、30~39歳で0.8%、40~49歳で1.3%、50~59歳で1.8%、60~69歳で3.4%となっています。
一方、過去に行った抽出調査から、日赤血液センターにおいてHCV抗体陽性であった人の約70%にはHCV-RNAが検出され(C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア))、残りの約30%にはHCV-RNAは検出されない(感染既往者)ことが明らかとなっています。
これをもとに、全国のHCVキャリア数を試算すると、2000年時点の日本の15歳~69歳の人口約9332.6万人の中に約88.5万人(72.5~104.5万人)のHCVキャリアが、自覚しないままの状態で潜在していると推計されました(Tanaka J. et al 2000)。
また、献血者のデータがない70歳以上の年齢層におけるC型肝炎ウイルス持続感染者 (HCVキャリア)率を3%と仮定し、この年齢層における人口を乗じて算出した数を加えると、日本におけるC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の総数は150万人以上にのぼると推計されます。
なお、15歳未満の年代では、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)は極めて少数(0.02~0.05%程度)存在するにすぎないことも分かっています。

治療

C型肝炎の治療は、基本的には下記の考え方に従ってすすめられます。

1.抗ウイルス療法により、C型肝炎ウイルス(HCV)の駆除を図る。
2.抗ウイルス療法の適応がない場合、肝庇護療法(抗炎症療法)により、肝の線維化進展の阻止または遅延を図る。

治療をただちに行うか、行うとすれば1、2どちらの治療方針を選ぶかは、慢性肝炎の病期(肝線維化の程度)、年齢、インターフェロン療法を行うことが可能かどうか、以前の抗ウイルス療法の効果はどうだったか、どのような副作用があったか、などから判断します。抗ウイルス療法の選択にあたっては、末梢血中のHCV量及び型(セロタイプまたはジェノタイプ)、インターフェロン治療効果に影響のあるIL28B遺伝子の型などを参考にします。
抗ウイルス療法の効果が高くなった現在は、可能な限り抗ウイルス療法(インターフェロン療法、インターフェロンとリバビリンの併用による治療)によりHCVを駆除し、完全治癒を図ることが第1の選択肢となります。
総合的に判断して、抗ウイルス療法の適応がないと考えられる場合や、抗ウイルス療法の効果が期待できない場合には、抗炎症療法(強力ネオミノファーゲンCの静注やウルソデオキシコール酸の内服など)を選択します。肝機能の改善を目的にインターフェロンの少量長期投与を行う場合もあります。
抗ウイルス療法の対象とはならず、肝発がんのリスクが高い状態(高齢、肝線維化の進展など)にまで進展している場合には、第2の選択肢、すなわち肝庇護療法によると共に、画像診断、腫瘍マーカーを用いた定期的な検査による肝がんの早期発見、早期治療を行い延命を図ります。
以上のように、C型肝炎の治療は、適切な診断に基づいて、適切な治療方針を選択して実施することが最も大切であることから、治療方針を決めるにあたっては専門医の関与が必要です。

あります。
感染しているC型肝炎ウイルス(HCV)の遺伝子型(ジェノタイプ)により、インターフェロン(IFN)治療を行った場合の有効率に差があること、さらに、治療法も異なるためです。血中のHCV量にもよりますが、現在治療の第一選択とされるペグインターフェロン・リバビリン・シメプレビルの併用療法を初回治療として行った場合、HCVのジェノタイプ1bでは90%近くの人でHCVが駆除され、慢性肝炎が治癒するという成績が得られています。また、ジェノタイプ2a、2bの人に対してはペグインターフェロン・リバビリン併用療法が行われます。初回投与の場合、90%近くの人でHCVが駆除され、慢性肝炎が治癒するという成績が得られています。

インターフェロン治療での有効率(ウイルスが完全に駆除される率)はジェノタイプ1bで80~90%(ペグインターフェロン・リバビリン・シメプレビルの併用療法を初回治療として行った場合)、ジェノタイプ2a、2bでやはり80~90%(ペグインターフェロン・リバビリンの併用療法を初回治療として行った場合)と高率に治癒します。これまでインターフェロン療法を行って全くウイルスが消えなかった難治例でも、ペグインターフェロン・リバビリン・シメプレビルの併用療法で30%以上の患者さんでウイルス排除に成功しています。
ただし、ペグインターフェロン・抗ウイルス療法(インターフェロン療法、ペグインター フェロン・リバビリン併用療法、リバビリン・シメプレビルの併用療法)は肝臓の病態(活動度や病期など)の正しい診断に基づき、全身状態、年齢なども考慮に入れた総合的な判断をもとに実施することが大切ですので、肝臓専門医の関与の下に行う必要があります。

インターフェロンの含まれる抗ウイルス療法を行った場合、多くの患者さんに発熱、倦怠感、頭痛、食欲不振、脱毛、白血球減少、血小板減少などが見られます。また、リバビリンを併用することにより皮疹、貧血の頻度が高くなります。これらの副作用は、治療を続けていくと軽くなっていく場合が多いですが、薬剤の減量や中断が必要になる場合もあります。
他に特に注意すべき副作用としては、「抑うつ」及び「自殺企図」があります。これらは、不眠や不安感などから始まることが多いようです。また。間質性肺炎、脳血管障害(高血圧の人に多い)、甲状腺機能障害、不整脈などにも注意が必要です。
また、リバビリンには催奇形性があるので、妊婦に投与することはできませんし、男性に投与する場合も、パートナーの方の妊娠を避ける必要があります。なお、インターフェロンの単独投与についても、妊婦に対する安全性が確認されていないことから、通常は行われません。
これらのことから、インターフェロンを用いた抗ウイルス療法、特にリバビリンとの併用療法を受ける際には、十分な知識と経験を持った専門医の指導、あるいはその協力の下に行うことが望ましいといえます。

子供の場合、慢性肝炎が自然に軽快することがしばしば経験されます。また、インターフェロンは成長・発達に影響を及ぼします。このため、インターフェロン療法は慎重に行われます。リバビリンの子供への使用についても同様に慎重に判断する必要があります。従って経験豊かな専門家の判断に基づき、治療を行うことが望まれます。

ガイドラインについては、当財団HPの 「肝炎研究支援」に掲載してありますので、ご参照ください。

出ることがあります。
代表的なものとしては、例えば、口腔粘膜の扁平苔癬、シェーグレン症候群などが知られています。

C型肝炎ウイルスと保健医療従事者

C型肝炎ウイルス(HCV)を含む血液に汚染された針を刺す事故等を起こした場合、約1.8%の頻度でHCVの感染が起こるとの報告があります。
一般に、感染が成立するかどうかは、汚染源となった血液中のHCVの量と、汚染時に被汚染者の体内に入る血液の量によって規定されます。採血時の注射針など中空になっている針を誤って刺した場合などには、比較的多くの血液が体内に入ると考えられることから、相対的に感染するリスクは高くなると考えられます。

被汚染者(針刺し事故をおこした本人)は、まず、できるだけ速やかに、流水中で血液を絞り出した(汚染血液の侵入量を最小限にとどめ)後に、傷口を消毒します。
なお、針刺し部位から、血液を口で吸い出すことは、口腔粘膜を介した感染を起こす危険があることから禁忌です。
事故後の検査は、以下の手順で行います。

  • 汚染直後の被汚染者のHCV抗体検査
  • HCV抗体が陽性の場合には、HCV-RNA検査(被汚染者がキャリアであるかどうかの確認が必要です。)
  • 1週間後、2週間後の2回を目安としたHCV-RNA検査を行います。

感染したことがわかった時には、インターフェロンを投与することにより慢性化(キャリア化)を防止できる場合があることがわかっています。なお、一般のガンマグロブリンの投与は感染予防のための効果はありません。また、事故直後に感染予防を目的としたインターフェロンの投与も一般には行われていません。

仕事上の制限を受けることはありません。
一般に、HCV感染の有無にかかわらず、すべての保健医療従事者は、厳格な無菌操作と手洗いの励行、基本的な感染予防措置を心がけ、注射針など鋭い器具による外傷を負わないように気をつける必要があります。このことを守っている限り、保健医療従事者から患者へHCVが感染するリスクはほとんどありません。

消毒

消毒用アルコール(酒精綿)で拭き取っただけで十分であるかどうかはわかっていません。
一般に、血液が床などに付着した場合には、次亜塩素酸ナトリウム液を軽く染ませた雑巾で拭き取った後に、通常の雑巾で拭き取っておくことが必要です。なお、血液が付着した手指などに外傷がない場合には、石けんを用いて流水で洗い流しておくだけで十分です。

まず、器具、機材等は使用後速やかに流水で十分に洗浄することが基本です。
血液が付着したまま乾燥させると、その後洗浄しても付着した血液のタンパクの除去が困難となり、その中に存在するウイルスを保護して(保護コロイドとしての作用を発揮して)、消毒を行っても感染性が残るもととなります。消毒の方法として最も信頼性の高い方法は加熱であり、薬物消毒は加熱できない材質または形状をした器具、機材に対して用います。加熱、薬物消毒のいずれも不可能な場合には、洗剤を用いて丹念に流水で洗浄することによってC型肝炎ウイルス(HCV)を除去します(吉澤、飯野:2002)。
各種の消毒法を要約すると下記のようになります。

1.洗浄:
ウイルスを含む血清タンパクの除去、ウイルス自体の希釈、除去を目的とし、使用後速やかに洗剤を用いて流水で十分に洗い流す。流水がすぐには使えない場合には、洗剤を入れた水に浸して乾燥を防ぎ、後に洗浄する。

2.加熱:
オートクレーブ、乾熱、煮沸のいずれかの方法で、設定した温度まで上昇したことを確認した後、15分以上加熱する。

3.薬物消毒:
1)塩素系消毒剤:
次亜塩素系の消毒剤使用時の有効塩素濃度1,000ppmの液に1時間以上浸漬する。(有効塩素濃度1,000ppmの消毒液をつくる時は、5~6%の次亜塩酸ナトリウム溶液(原液)を50~ 60倍に希釈する)
2)非塩素系消毒剤:
2%グルタールアルデヒト液、エチレンオキサイドガス、ホルムアルデヒド(ホルマリン)ガスを用いて消毒する場合には、器具、機材を充分に洗浄した後に水分をよく拭き取ってから燻蒸を行う。

<参考文献>

詳細版
Q1:HCVとC型肝炎の知識 第4版 (財)ウイルス肝炎研究財団 編2010

Q11:吉澤浩司、他:霊長類(チンパンジー)を用いた感染実験 ―感染初期の末梢血中における HCV RNA増加速度―. 厚労省「C型肝炎の自然経過および介入による影響の評価を含む疫学的研究」班 報告書2004.3

Q12:Tanaka J. et al: Early dynamics of hepatitis C virus in the circulation of chimpanzees with experimental infection. Intervirology, 48:120-123, 2005

Q20:吉澤浩司、他:水平感染によるHCVキャリアの新規発生に関する検討. 厚労省「非A非B型肝炎研究」分子疫学研究班平成7年度 報告書 1996.3

Q22:日本赤十字社. 日本赤十字社におけるヘモビジランス 2013. 2014.6

Q24:広島透析患者肝炎Study group:血液透析施設におけるC型肝炎ウイルス感染に関する血清疫学的調査. 厚生労働省「C型肝炎の自然経過および介入による影響等の評価を含む疫学的研究」班、平成14年度報告書 2003.3

Q26:Moriya T. et al: Transmission of hepatitis C virus from mother to infants : its frequency and risk factors revisited. Biomed. & Pharmacother. 49:59-64, 1995

Q31:Tanaka J. et al: Natural histories of hepatitis C virus infection in men and women simulated by Markov model. J. med. Virol. 70:378-386, 2003

Q32:Mizui M. et al: Liver disease in hepatitis C virus carriers identified at blood donation and their outcomes with or without interferon treatment. Sutudy on 1019 carriers followed for 5-10years. Hepatology Reserch. 37:994-100, 2007

Q37:Sex and age-specific carriers of hepatitis B and C viruses in Japan estimated by the prevalence in the 3,485,648 first time blood donors during 1995-2000 Intervirology, 47:32-40, 2004

Q43:熊田博光:厚生労働省「科学的根拠に基づくウイルス性肝炎診療ガイドラインの構築に関する研究」班、平成25年度総括・分担研究報告書 p20-25. 2014.3

Q40,Q49:吉澤浩司、飯野四郎 共著:ウイルス肝炎、診断・予防・治療 改訂2版 文光堂刊、2002.